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「岡永歯科における顎関節症治療の現状について」 注1)

<目的>
顎関節症治療における3本の柱は、@噛み合わせの治療、A理学療法、B薬物療法であるが、日常の歯科臨床では理学療法が行われる機会は極めて少ない。顎関節症治療も、噛み合わせの治療にウェートが置かれ、その他の治療は軽視されがちであった。
そこで、今回は、筆者が行なってきた理学療法を併用した顎関節症治療をカルテより臨床的に検証し、顎関節症治療における理学療法の位置づけを再検討した。注2)

<資料及び方法>
岡永歯科において3ヶ月以上継続して顎関節症の治療を受けた患者のカルテから無作為に40人分を抽出して、問診内容、病状、治療内容、経過などについて統計処理をした。

<結果>
40人分のカルテを調べたところ、性別構成、年齢構成、初診時の自覚症状、初診時の診査結果、職場や家庭での日常生活で頻度の多い動作、治療内容、治療期間、治療経過は、以下の通りであった。
(1) 性別構成
 
男性 15人(37.5%)
女性 25人(62.5%)
(2) 年齢構成(初診時)
 
20歳未満 2人(5%)
20歳台 15人(37.5%)
30歳台 14人(35%)
40歳台 6人(15%)
50歳台 2人(5%)
60歳以上 1人(2.5%)
(3) 初診時の自覚症状(問診表より)
 
「首筋が凝る」 31人(77.5%)
「肩が凝る」 26人(65%)
「目が疲れる」 24人(60%)
「口を開ける時に途中で引っかかる感じがする」 20人(50%)
「口の開閉時に音がする」 16人(40%)
「頭痛がする」、「口が開けにくい」 15人(37.5%)
「口を開ける時に途中でずれる感じがする」 14人(35%)
「歯を食いしばることが多い」 13人(32.5%)
「前かがみになっている」、「目の奥が痛むことがある」、「歯並びは悪い方である」、「親知らずがある」 12人(30%)
「背中が痛む」、「一方の肩が傾いている」、「昔から歯が悪い方である」、「硬いものを噛むと疲れる」、「大きく口を開けるときに痛みが走る」 11人(27.5%)
「X脚あるいはO脚である」、「口の開閉がスムーズにいかない」、「最近、歯の治療をした」 10人(25%)
「立ちくらみをおこすことがある」、「片方のみで噛んでいる」 9人(22.5%)
「頭が左右一方に傾いている」、「胃腸の調子が悪い」
「歯列矯正をしたことがある」
8人(20%)
「手足のしびれがある」、「めまいがする」、「口臭がある」、「口内炎がよくできる」、「頬の粘膜をよく噛んでしまう」 7人(17.5%)
「耳鳴りがする」、「息切れがすることがある」 6人(15%)
「歯が抜けたままになっている」、「息がつまる」、「声がかれる」、「扁桃腺が弱い」 5人(12.5%)
「いびきをかく」、「歯と歯の間がすいている」、「受け口である」、「出っ歯である」 4人(10%)
「動悸がある」、「まっすぐに立てない」、「八重歯がある」、「乱ぐい歯である」、「長く話すと疲れる」 3人(7.5%)
「治療した歯が痛むことがある」 2人(5%)
「身体が静止できない」、「歯がグラグラする」、「歯ぐきから出血している」 1人(2.5%)
(4) 初診時の診査結果
 
@ 下顎運動  
●最大開口量  
2 cm未満 1人(2.5%)
2 p台 1人(2.5%)
3p台 10人(25%)
4p台 18人(45%)
5p台 9人(22.5%)
6p以上 1人(2.5%)
●開閉運動をまっすぐにできなかった者 12人(30%)
右偏位 8人(20%)
左偏位 4人(10%)
●開閉運動をする時、顎関節に雑音が認められた者 34人(85%)
左右 15人(37.5%)
12人(30%)
7人(17.5%)
●下顎を運動する時、疼痛が認められた者 9人(22.5%)
前方運動 4人(10%)
右側方運動 5人(12.5%)
左側方運動 6人(15%)
   
A 筋肉の緊張状態  
●筋肉の圧痛 40人(100%)
●胸鎖乳突筋  
2人(5%)
36人(90%)
左右 2人(5%)
●僧帽筋  
2人(5%)
35人(87.5%)
左右 3人(7.5%)
●側頭筋  
3人(7.5%)
7人(17.5%)
●咬筋  
6人(15%)
7人(17.5%)
●肩の高さ  
右が高い 1人(2.5%)
左が高い 36人(90%)
左右同じ 3人(7.5%)
B 脊椎の状態  
頚椎と胸椎に歪みが認められた者 19人(47.5%)
頚椎と胸椎、腰椎・骨盤に歪みが認められた者 21人(52.5%)
脊椎に歪みが認められなかった者 0人(0%)
C ストレスの状態  
心理テスト注3)の結果、何らかの問題が認められた者 9人(22.5%)
(5) 職場や家庭での日常生活で頻度の多い動作
 
パソコンの使用 18人(45%)
デスクワーク 9人(22.5%)
自動車の運転 4人(10%)
重たい物を持つ 4人(10%)
立ち仕事 3人(7.5%)
反復動作 1人(2.5%)
(6) 治療内容
  @ 理学療法:カイロプラクティック(40人…100%)
・主に用いた手技
  頚椎…ツーハンド・サービカル・エクステンション、マスター・サービカル図1)
 
図1)
  胸椎…シィッティング・ソラシック・エクステンション・フルネルソン図2)
 
図2)
  腰椎…イリオ・デルトイド
  骨盤…イリオ・デルトイド、イシアル・デルトイド、ペルビス・デルトイド
  ・矯正部位
 
頚椎と胸椎 19人(47.5%)
頚椎、胸椎と腰椎・骨盤 21人(52.5%)
  ・その他の理学療法
 
顔面部の赤外線療法・低周波治療図3) 40人(100%)
 
図3)
 
顎関節のストレッチ注4) 40人(100%)
 
A 歯科治療
:(40人…100%)
 
スプリント図4)の治療中 30人(75%)
 
図4)
 
スプリントの後、噛み合わせの調整中 7人(17.5%)
スプリント、噛み合わせの調整後、最終的な被せ物・入れ歯の治療 1人(2.5%)
スプリント、噛み合わせの調整後、歯列矯正中 2人(5%)
※ スプリントは、スタビリゼーション型図4)を夜間のみ使用した。
 
B 心理治療(4人…10%)
 
自律訓練法 4人(10%)
薬物療法 3人(7.5%)
(7) 治療期間
 
3ヶ月 7人(17.5%)
4ヶ月 4人(10%)
5ヶ月 3人(7.5%)
6ヶ月 3人(7.5%)
7ヶ月 2人(5%)
8ヶ月 0人(0%)
9ヶ月 5人(12.5%)
10ヶ月 4人(10%)
11ヶ月 3人(7.5%)
12カ月 7人(17.5%)
13ヶ月以上 2人(5%)
(8) 治療経過
 
臨床的に病状の軽快が認められた症例 39人(97.5%)
臨床的に病状の軽快が認められなかった症例 0人(0%)
治療中断につき、予後の判定ができなかった症例 1人(2.5%)
 
<考察>

今回、資料として、無作為に40人の患者を抽出した。40症例という少ない症例数ではあるが、その内容に偏りがなく、資料として問題がないものと考える。また、岡永歯科では、理学療法の併用以外は通法に従って治療を進めているので、経過の差異は理学療法の併用によるものと考えてよいと思う。統計処理の結果、97.5%の症例で臨床的に病状の軽快が認められている。
以上より、“顎関節症治療において、理学療法の併用が有効である”と考えられる。
   
  注1) このレポートは、千葉県歯科医学会誌第1巻に投稿した論文を、一般の方を対象に一部わかりやすく書き直したものである。

注2) 平成12年に神奈川歯科大学学会総会にて「顎関節症治療に関する理学療法の位置づけに関する私見」を発表し、研究奨励賞を受賞した図5)。今回のレポートは、その内容を更に詳しく検証したものである。(カイロタイムスに掲載された記事をご覧になりたい方は、写真をクリック!)
 
図5)
 
注3) 当院では、交流分析を行っている。

注4) 当院では、MET法という治療法を行っている。
同じような治療が、理学療法の分野でPNFという別の名称で広く行われ、成果を上げている。



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